趣意書

創業三百年碑延宝3年(1675年)6月、先祖が西条(四日市次郎丸村)の地に酒造業を創始して以来、光蔭は流れてここに創業300周年の記念日を迎えることが出来た。

300年の歳月、それは永遠なる歴史の一コマに過ぎないにしても、この間辿り来た道は決して平坦なるものではなかった。
時代の展開するに伴って、あるときは前面に立ちはだかる厚い障壁に行く手をさえぎられ、またあるときはどうしようもないほどの苦境に陥るなど、幾多浮沈の危機に遭遇したのである。
しかしながら、幸いにしてこれらの難関を突破し、隘路を打開してよく今日に到着し得たのは、これ全くこの地域に生まれた先哲の深い英知によるご教導と、先輩方の温かい慈愛によるご庇護とのお蔭である。
また、そこには働く人々の血のにじむ労苦や、汗にまみれての研究と精進とが続けられたのであって、これらの努力が実に恵まれた自然的条件と絶好の環境の中に累積されてきた賜であることを銘記しなければならない。
そして、このような無限の恩愛と、慈恵に生かされてきたことを思うとき、心から頭を垂れて感謝し、かつ報恩の道を講じずにはおれないのである。

亡父 島 博三は、志あって育英資金の提供などにその微意を表していたが、たまたま敗戦による経済界の動乱に際会して、その機能を失う結果となったことをいたく遺憾としていた。
ここにおいて創業300年記念事業として、地域社会に対する奉仕活動を行うために、新たに財団法人嘉登屋記念事業団を設立するものである。
昭和50年8月1日
設立代表者島 英三
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